精神保健に関する情報

統合失調症について




 
 統合失調症という病気は、一般の人には誤解を持って受け取られていることが多いようです。病名から「精神が分裂してしまう恐ろしい病気」というふうに思われていたり、まったくわけが分からない状態になるとか、入院しないと治療できないとか…。うつ病が世間で認知されるようになってきたのとは対照的に、統合失調症のことは誤解や偏見がまだまだ多いのが実状でしょう。
 
 発病率は、130人に1人と、まれな病気ではないのですが、一般には自分がこの病気にかかるかもしれないと考える人は少ないようです。多くの病気の治療と同じで、統合失調症でも早期発見・早期治療が病気の経過を左右します。
 統合失調症は、多くの心の病と同じように体質と環境が関係していると言われていますが、はっきりした原因は分かっていません。
 自覚症状としては、病気の勢いの強い時期には、聞こえないはずの声が聞こえたり、思いこみがひどくなって、周りの説得が耳に入らなくなってしまうようなことが起こります。患者さんにとって辛いのは、このような幻の声や思いこみは、多くの場合周りの人が自分を陥れようとしていたり、自分のことを探っていたりするような感じをともなっていることです。時には家族すらも信頼できなくなってしまいます。ですから、患者さんは孤立無援の気持ちになります。
 周囲から見ると、つじつまの合わない言動が目立ったり、一人で考え込んでいるように見えます。まったく外に出ようとせず部屋に雨戸を閉めて閉じこもるということもあります。ただ、ぼんやりしていることが多い、という程度に見えることもありますが、本人は非常に辛い思いをしているのです。このような時期を過ぎると、今度はエネルギーが切れたように何をするのもおっくうで疲れやすくなります。これは、病気の勢いの強い時期に消耗した分が恢復する時期なので、普段の生活に戻るためには必要な時間です。消耗した状態なのに、幻の声が続くということもあります。
 
 次に、統合失調症の治療について少しお話しします。
 病気の勢いの激しい時期、消耗している状態の時期を通じて、薬を服用することは一般に考えられている以上に重要です。心がけや根性だけではどうしようもないところが、病気にはあります。それは、からだの病気と同じです。最初は、ご本人がどうしても診察を受けようとしないことがあります。そのような場合は、まず保健所の精神保健福祉相談員に相談されると良いでしょう。
 病気の勢いや行動面での問題によって、入院治療の方がいい場合もありますが、最近では外来だけで治療が十分に出きることが多いことも知っておいて下さい。また、入院治療でも昔のように何年も入院などということはなく、ほとんどは数ヶ月早ければ一ヶ月以内に外来での治療に切り替えることが可能です。

 この病気を治療する上で大切なことは、患者さんを孤独にしないということです。ともすれば、病気の症状によって起こる困った行動や無気力な状態にばかり目がいって、周囲は病気であることを忘れて叱責や文句ばかりということにもなりかねません。病気を治すためには、患者さん自身がどのようなことをもっともしんどいと感じているかを見つけだして、まずはそのしんどさを軽減することを家族や医療者が共通の目標にします。統合失調症の治療は、いったん治っても再び病気の勢いが強くなることがあるために、長くなってしまうことが少なくありません。このような再燃を予防するためには、患者さん自身が治療に主体的に関わる必要があります。ですから治療のはじめに患者さん自身が治療に協力しやすい形にできるかどうかが、非常に大切です。

 消耗の時期を過ぎる頃に、リハビリが必要な場合があります。リハビリの方法には、デイケアや作業所があります。リハビリは、狭い意味での治療効果だけでなく、闘病を孤独なものにしないということがあります。家族といえども、この病気の本当のつらさは理解できないものです。そのためにも、同じ悩みを持つ人たちとの交流は必要です。家族のための交流の場としては、家族会があります。


presented by o-clinic