子どものための精神科の薬


児童や思春期の子どもにとっても、薬物療法は精神疾患の治療のために有用です。医者に薬を使うことをすすめられたら、両親や子ども自身も不安になるかもしれません。子どもの精神疾患の薬物治療の経験のある医師が、薬物を使用すべきかどうかを判断すべきでしょう。医師から、薬物を使用する理由、それによって得られる効果と副作用、可能性のある危険、薬物以外の治療の可能性について説明を受けるようにして下さい。

薬物療法といっても、薬だけ飲んでいればいいということではなく、総合的な治療の一部であって、普通は精神療法なども併用します。

薬物療法を始めるに当たっては、児童精神科医は子どもの状態について、包括的な診断を行います。場合によっては、心理テストや知能テスト、血液検査や心電図、あるいは脳波、頭部CTやMRIなどの検査を行うこともあります。精神科的薬物療法は、様々な問題の治療に用いられます。

例えば以下のような場合です。

  1. 夜尿(おねしょう)−5歳を過ぎてもずっと夜尿が続いて、そのために自信がなくなったり、社会性が育ちにくかったりするような場合
  2. 特別なものを恐れる(恐怖症)や全般性の不安−そのために子どもが普通の生活に支障を来しているような場合
  3. 注意欠陥多動障害−非常に飽きっぽく、注意を集中することができず、落ち着きがない。すぐに混乱したり、欲求不満になったりして、多くは学校での生活に支障を来す。
  4. 学校恐怖(分離不安)−家を出るのが怖くて、学校に行かなかったり学校へ行くのが非常に辛かったりする。
  5. うつ病−悲しい気分や絶望感、寂しさ、あるいは自分が価値がないという感じや自責の念がして、何も楽しむことができず、成績が下がったり、食事や睡眠の様子が変わる。
  6. 摂食障害−食べずにやせたり(拒食)大食して自分でそれを吐いたり、あるいはその両方の症状が見られる。
  7. そううつ病−「うつ」の状態が終わると「そう」の状態に切り替わる。「そう」の時は、イライラしたり、ハイな気分になったり、すごくエネルギーが出たり、遅くまで起きていたり、すごく大きいことを考えたりという行動上の問題も見られる。
  8. 精神病−不合理な考えにとりつかれたり、妄想や幻覚(存在しないものが見えたり、聞こえたりする)、引きこもり、しがみつき、奇妙な行動、極端な頑固さ、儀式的な行為を続ける、日常生活習慣がいい加減になる

精神科で使う薬は大きく分けると以下のようなものがあります。

これらの薬剤の子どもに対する効果は、充分に研究されているというわけではありません。ですから、これらの薬の処方はこれらの薬物の使用経験のある医師が行う必要があります。

精神科の薬物療法は有効な場合でも、副作用が出現することがあります。それは、無視できる程度の軽いものから非常に重篤なものまであります。従って、薬物は包括的な治療計画の下で使用されなければなりませんし、その都度薬物の効果や状態について評価し、同時に精神療法を併用することが必要です。充分な経験を積んだ医師によって処方された適切な薬物は、精神的な問題を持っているこどもたちが元の普通の自分の感じを取り戻す役に立つでしょう。


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このページはthe American Academy of Child and Adolescent Psychiatry(アメリカ児童青年期精神医学会)が、一般向けに提供している情報の抄訳です。一部日本の事情にあわせて変えているところがあります。

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