はじめに

『○○相談と権利擁護』

『○○相談』を始めるに当たって−その使命−

『薬物相談』の現状

『薬物相談』を進める前に

『薬物相談』を進めてみよう




薬物相談に応じるこころがまえ

岡田 清
(薬物相談マニュアル/大阪府麻薬覚せい剤対策本部中毒者対策部会編より)

はじめに

 一般的に「相談」という言葉は日常的に気軽に使われているものです。例えば、新幹線に乗るときに何時の列車に乗れば、予定の時刻に東京駅に着くことができるか、JRの駅員さんに気軽に相談することができます。駅員さんは時刻表を見て「禁煙席では、のぞみ45号東京行には空席がありますよ」と的確な情報を与えてくれます。その的確な情報を利用するかどうかは、相談した人の判断に任されます。相談して提供された情報が、相談者にそのまま利用される場合もあれば、そうでない場合もあります。例えば、相談した人が、途中で気が変わり、違う新幹線を利用しても良いことになります。このように相談という言葉は日常生活の中で何気なしに使われる言葉の一つになっています。今例示したように、実際に相談は簡単に実行に移すことができるものです。
 ところで、『○○相談』というような特定の名称を付けると、少し趣が変わってきます。社会の中である限られた対象が、『○○相談』を利用する必要性を持っている人になります。また『○○相談』には担当する担当員がいります。担当員は相談者に対してその必要性を満たすことができなければなりません。例えば、新聞紙に目を転じてみますと、さまざまなニュース以外に、『人生相談』のコラム欄を企画している紙面があります。『人生相談』は、相談者と回答者と二つの立場の違った人たちによって構成されています。通常、回答者に選ばれている人は、その道の権威のある人です。つまり回答者は一般の回答者よりも、権威があり、専門性をもっている人であると言ってもいいでしょう。
 2種類の相談の形を挙げてみましたが、まとめてみましょう。後でも述べますが、2種類の相談は形は違っていますが、内容では連続性を持っているものです。


1) 相談の場合
  • 誰でも日常的にコミュニケーションとして行っていること。
  • 特に相談に来る人(来談者と表現します)とそれに応じる人(相談員と表現します)の区別がなく、形式張っていないこと。
  • 結果如何を問わず、情緒的な交流も見られること。
  • 自分で決めることができなかったことが、相談することによって決めることができること。
  • 親密さを強化することに繋がること。
  • 解決の着く範囲を選択し、その中での相談内容を期待していること。
2) 『○○相談』の場合
  • 『○○相談』は、来談者と相談員の二つの立場があって成立するもの。
  • 『○○相談』は、来談者が抱える問題を回答できる相談員がおり、相談員が回答することで、終了するもの。
  • 『○○相談』は、来談者が抱えている問題を明るみに出すことによって、相談員とともに解決に向かう方向性を見つけるもの。
  • 『○○相談』では、相談手段として、来談者の抱えている問題について話し合える方法であれば、どのような方法でも成立する。相談手段として使用できるものとして、間接的なテレビ、電話、インターネット等の媒体を介して、あるいは直接面談することによっても可能。
  • 『○○相談』での相談行為は、新たな情報を伝達する、適当な人(専門家あるいは非専門家を問わず)を紹介する、簡単なカウンセリングを行う等の方法を通して、社会性を持ち、成立している。