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『薬物相談』を進める前に
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最初に『薬物相談』の現状をあげてみました。社会資源として重要な『薬物相談』がいかに少ないのかお分かり頂けたでしょう。逆に、困難さはあると思いますが『薬物相談』を積み重ねていくことは、非常に重要なことであり、今後の社会に対する重要な使命を持っているといえます。『薬物相談』の現状を知って頂いた上で具体的に『薬物相談』の進め方について考えてみることにしましょう。
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1) |
相談の対象について |
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『薬物相談』を始める前に知っておかなければならないことは、どのような人たちが対象になるかということです。薬物相談にのっている印象を踏まえて述べてみましょう。
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A) |
薬物(ドラッグという)乱用者の家族及び親戚
来談者は混乱し、疲れ果ててたどり着いている場合が多い。非合法的なことでもあり、世間の誰にでも相談できないこともあり、この相談機関から、たとえ電話であっても警察に連絡されないということを聞いて、安心して相談に来る人たちである。そういう意味では、来談者のこころのケアが必要な場合さえ見受けられる。家族関係に亀裂が入っていることも多く、家族内部で断絶状態になっている場合も少なくない。 |
B) |
本人自身からの相談
本人が相談に来る場合は、友達に勧められてやって来ることが多い。
「止めたいと思っても止められない」という苦しさに悩んでいる本人たちが多い。
多くのドラッグを使わなければ、生きることができなかったというストーリーを持つ人が多い(『ボクにとってクスリは救いだった』という回復を目指す薬物依存症者の言葉)。 |
C) |
その他の領域の専門家からの相談
専門家からの相談は『どう対処したら良いか』という相談が多い。事例に関する情報の交換に終わることも多い。事例検討会を開いて検討するところまで話がなかなか進まないのが現状である。
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2) |
相談の内容について |
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相談の内容は多岐にわたる事が多い。最も多い来談者である家族の相談内容をまとめてみることにしょう。 |
A) |
混乱時の相談
『何とかしないと警察に捕まってしまう。どうしたら良いか』、『あの子がクスリをしていることをちっとも知りませんでした。どうしたら止めさせられますか』、『近所から大声をあげるなと芳情を受けています。どこか入院させるところありませんか』、『痩せてきておかしいと思っていました。会社の上司の方から電話がかかってきて、ここ数日間出社していないけど、どうされているんですか。このままでは会社としても困るのですけど』、『あの子の部屋に入ったら、注射器が落ちていました。クスリしていると思ってましたんやけど、この注射器、警察に届け出ないとあきませんか』等。 |
B) |
方向性が決まった段階での相談
『もっと入院していると思っていたら、もう退院してきましたのですわ。どうしたらクスリ使わさんと過ごすことが出来ますか』、『毎日お金いくら渡したら良いのでしょうか。お金があったらすぐクスリに行きよりますから』、『もう3回目でしょう。親としても愛想が尽きています。向こうからは、身元引き受けを早く決めてくれないと困ると行ってきています。もう身元引き受けるの、こりごりです。どこか身元引き受けてくれるところありませんか』、『毎月1万円送ってこいと行ってきましたけど、いくらぐらいが良いのでしょうか』等。 |
C) |
回復に向かっている時期
『ミーティングやと言って毎晩出ていってますけど、却ってクスリ使うようになりませんか』、『もう1年止めていますけど、仕事に行かせても良いものでしょうか』、『アルコール類をまだ飲んでいるのですが、どうしたら良いですか』、『他のお母さんから開きましたが、うちの子も○○ダルクに入所できませんか。あそこは厳しくて良く面倒を見て頂けると開いたんですけど』等。
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3) |
『薬物相談』の最近の傾向 |
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相談の対象者と相談内容について述べてきましたが、それでは相談員としてどのように対応していけばよいのでしょうか。ここで復習になるかもしれませんが、あるいは第U章と関係しているかもしれませんが、簡単に第3次乱用期の『薬物相談』の傾向をまとめてみましょう。 |
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第3次乱用期の『薬物相談者』の傾向 |
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A) |
非合法的なドラッグをはじめ合法的なドラッグが日本中に満ちあふれています。。ドラッグは依存を引き起こし易いものが多く、薬物依存症という疾患と障害に到る人たちが多く出現しており(広間するところでは、刑務所に服役している人たちの5割以上が覚せい剤に関係した罪状で刑期を務めているということです)、社会的損失の非常に高いものです。 |
B) |
来談者の年齢は、15歳ぐらいから50歳までの層が多く、年齢が高くなるにつれ、サポーターが少なくなる傾向があります。両親や親戚が高齢化するということも関係しているでしょうが、社会的サポートも少なくなるという理由があります。 |
C) |
来談者は圧倒的に家族が多く、本人自らの相談は少ない。同伴して相談に来る場合、7割は家族の意向が働いていることが多い。 |
D) |
相談は多岐にわたることが多く、解決に当たってアセスメントやプランニングの段階で刑法及び民法に関係する法律的な知識、精神医学的な知識、社会資源にまつわる知識を必要とする場合が多い。 |
E) |
『薬物相談』は他の相談と比較してみて、労力は人一倍必要とする割に、長期間拘わりながら、相談員として満足できる結果を得ることが少ない(このことは一時代前の精神分裂症の方を対象に相談にのっていた時代を考えると、やがて克服できる可能性の高さを期待できるでしょう)。
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第3次乱用期の『薬物相談』の傾向をまとめてみました。ここへ暴力団の関与の話が入ってくると、もう『薬物相談』は止めたいという気持ちになります。
そこは厚生労働省の方でも良く分かっていて、各相談機関のできる範囲のことを進めるように指導しています。例えば、『家族教室』の開催を勧めています。大阪府の歴史から考えてみると、アルコール依存症(この時は障害が含まれていませんでしたので、医療機関との連携が中心に置かれていました)の取り組みが参考になります。『家族教室』から『アルコール関連問題連絡会』と地域社会の問題へと進んでいきました。直接的に問題解決に切り込んでいくというよりは、家族の持っている当事者に対する認識を変え、違う角度から家族がアルコール依存症に立ち向かう勇気を『家族教室』の中で培ってきました。
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